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時空レスキュー隊火影とシェヘラザード

時空レスキュー隊火影三代目とシェヘラザード

第1夜 こちら火影3号

1 プロローグ
 先月、時空紀元3500年において、レスキューシグナルをキャッチした。
 場所、チグリス=ユーフラテスの合流点、バビロン近郊である。
 このごろ、火影隊長は超多忙である。
 技術革新により、過去や未来まで、命を拾いに出動するのである。
 ひろって拾って拾いまくる。
   落とせば命が失われる。

 人は必ず何かによって支えられて生きている。
 自分自身で支えることも他人に支えられることもある。
 その支えがなくなると下におちて、結果落命する。
 火影はそのまさに落ちようとする命を拾って、元に返すのが仕事である。
 たまに失敗して後悔する事もあるが、自分の意思で落ちようとする人がいるので毎日悩んでいる。
 先日も地獄の入り口までテレポートし、リストカットの少女を救出した。(5/30の日記)
 それ以降、霊界レスキュー火影、との名前を頂戴したばかりである。

2 出動指令
 「火影3号は直ちに、時空変換機を作動させ、座標を合わせた上で現場へ向かえ」
 「了解火影3号ただちに出発します」復唱し、行動開始。
 うう、寝起きは体にこたえる。もうちっと暖気運転したいのだが、助けを求められては行かない訳には、ぶつぶつ。
 よし、これで装備万端、出発。

 真黒の宇宙に浮かぶ青い地球、その一部から、星がひとつとびだした。
 日本、大阪の上空から。
 「こちら火影3号、ただいま、発射に成功、任務にむかう。」・・・・・・・・・・・
 う-ん睡魔が襲う。不覚・・・・・・・
 意識不明・・・・・・

3 王都シャーリアールシティ
 なんとか、たどり着いた。
 朱色のつなぎ制服もぼろぼろ。
 陣笠ヘルメットも破れて捨ててしまった。
 オマケに白ヒゲまで生えて、白マントを何とか入手したが、まるで、ロードオブリングの魔法使いだ。
 まぁこれでもいいか。この映画のコスプレもそれなりに流行しているし。
 それにしても、腹が減った。
 むむ、れいによって妙齢の美女がこちらに向かって来る。今度は二人連れだ。
「あのー、魔法使い様で?」
「さきほどお告げがありまして、白ヒゲの魔法使いが現れ、私たちを救ってくれるはずなんですけど。」
「あなたなんでしょうか?」
 けげんな顔でしかも期待をこめた目でじーっとみつめられる。なんだか恥ずかしくなってくる。
 火影は見つめられるのが苦手なのだ。ますます恥ずかしくなってくる。
「あいや、おじょちゅう。そなたたちの名は?」
「申し送れました。大臣カシムの長女シェヘラザードと申します。」
「妹のドニエラザードでございます。」
「拙者火影でござる。以後お見知りおきを。その前に腹が減って」
「まぁさようでございましたか。」
「あらわれたら、まずご馳走せよとの、付箋もありましたので、用意してございます。」
「ささ、こちらにどうぞ」
 なんだかいやに手回しがいいな。
「よかろう、まいるぞ」

4 大臣カシムの部屋
「火影殿、シャーリアールシティへようこそ」
「豪勢な部屋でござるな。してお困りの件とは?」
「実は我が君、シャーリアール王がさることが原因で極度の女性不信となりまいて・・・」
「ほう、さることとは?」
「前の妃が不貞を働いたのです。」
「それ以来、世に住むすべての女性が信じられなくなり、毎晩新しい娘を夜伽に召しては、翌朝になると処刑してしまうのです。」
「国中の若い娘がいなくなってしまったのです。」
「おう、それは大変、もう少しそれを早く知っていたら、火影はモテモテであったろうに」すぐ、やに下がる火影であった。
「しかも、もうひとつ問題が、長女シェヘラザードが是非自分を差し出せときかないのでございます。」
「理由はおききになったのか。」
「自分なら、王をおなぐさめでき、女性不信を解くことができるというのです。」
「えっ、娘ごがみづから?それは殊勝な。失敗すれば首と胴がおさらばというに」
「よし、わかった。火影三代目、全力をあげて助力しよう。」
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別室にて、ヒソヒソ・・・・・・・ヒソヒソ☆ヒソカ☆・・作戦1はこれで行こう。ヒソヒソ。リムスキーコルサコフの交響曲をBGMに、なるほど、ヒソヒソ。
切手
5 スルタンシャーリアールの寝室
 「お願いでございます。姉もいっしょで3Pで。」
 「ほう、このごろ娘も駒不足で2日にいっぺんと省資源化していたが、今宵はダブルとな」
 「姉?もう一人いたのか。名前は?」わずかではあるが眼がキラーンと光った。
 「火影、いえホカヘラザードと申します。バクダットから帰ったばかりです。」
 「よろしい、許してつかわす。」
 「死刑執行人!明日は二人分用意しておけ。」
 「は、は、はい、ありがとうございます。」かわいそうに声がふるえてしまっている。
  いよいよ出番だ、どきどき。
 「闇の女神よ、その若さ美貌をわが身に、秘術お色気の術」
 今回はお立ち台なしだ、体重がなかなか減らないので、こわれるのを恐れたのだ。
 おお、なかなかいけるではないか、我が術も進歩したものだ。精進精進。
 「スルタンさま、おばんです。うふっ」---フフフ( ̄+ー ̄)キラーン
 「おうこれはめずらしや、1盗2後家3年増の第三位ではないか。」
 「良かった。年増ごのみであったか。」
 「どうりで、若い娘を1夜だけでポイするのはおかしいと思っていた。」

 これより、スルタン=シャーリアールVS火影・シェヘラザード連合軍
 命を懸けた3Pバトル。
 開始の幕が切って落とされたのである。

 (つづく、次回18禁描写はありません。期待しないように)

 (補足)
 火影の子供時代に、母の嫁入道具の文学全集「千夜一夜物語」(戦前発行)を読みましたが、
 話の面白さより、物語を創作した、クリエイターとしてのシェヘラザードの聡明さが、今も印象に残っています。

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第2夜

これより、スルタン、シャーリアール王VS火影・シェヘラザード連合軍
 命を懸けた3Pバトル。
 開始の幕が切って落とされたのである。

6 バトルトーク悪戦苦闘
 火影はたいそう緊張していた。
 失敗すれば、せっかく仲良くなったシェヘラザード嬢もろとも、殺されてしまうのである。
 過去3年間毎日うら若き乙女たちが、落命し続けた。かれこれ1000名を超える被害者である。
 なんとしても、拾い屋火影の面子にかけても、この悪弊を阻止しなければならない。
 術によって今、身は女性なれど心はスーパーヒーローの火影三代目である。
 よし、てはずのとおり、作戦開始、シェヘラザードにブロックサイン。
「お姉さま、まだ夜は長いし、おもしろくて楽しくて聞いた事のない話をしてくださらない。」
「はい、お優しいスルタンさまが、お許しくだされば」お、いい調子。
「うむよかろう。なるべく、手みじかにな、余は気が短いのだ。」
「ああ、お情けふかいスルタンさま、ありがとうございます。それでは。」やった、これで、こっちのものだ。
「私が前にいたバグダッドでのことです。アリ馬場という貧しい若者が、猪木といっしょに・・・・・」

 口からでまかせでは、つじつまがあわなくなってしまう。よし、正統派で行こう。
 開けゴマのご存知『アリ・ババと40人の盗賊』、『船乗りシンドバッドの冒険』、ランプと指輪の精の力を借りて幸せをつかむ『アラジンと魔法のランプ』などなど、天下の奇書、「アラビアンナイト」の世界が繰り広げられた。
 殿方の歓心を誘うべく、美女と魔法シリーズ、楽しかったり、ほろっとさせたり、不思議な物語。
 恋愛、旅行記、冒険譚、寓話逸話、幻想夢想、メイン180話、外伝100の壮大な御伽話である。
 しかし、火影とシェヘラザードは命がけ、スリリングなバトルトークが続く。
 スルタンが、「もういい、話をやめよ。」といえば、万事休す、一巻のおわり。
 退屈させてはならない。眠らせてもならない。
 一見楽しそうだが、緊張の連続だった。暇つぶしとして物語を語っていたのではない。
 額から汗が、冷や汗がたらり、タラリ。
うっまずい。スルタンのこめかみがピクッ動いた。やばい。
 しかたがない。分身の術。
「これはどうしたことじゃ、ホカへラザードが、ふたり、3人、5人、20人どんどん増えていく。」
「目が回る」
しまった、目を回してしまったのでは元も子もない。このまま朝になれば、チョンだからな。
ええい、ハーレムの術(影分身の術とお色気の術を合体させた高等忍術)
大勢の美女軍団がわんさかわんさかイエーイイエーイイ。
スルタンも思わず鼻血ブー。
いかん。出血多量で死なしてしまったのでは、それもこれも、元も子もないワイ。
・・・・「おもしろーいい」☆(=^○^=)☆
喜んでくれているぞ、希望が出てきた。
「処刑は延期することにする」
ほっ、とりあえず生き延びたか!
疲れた。

7 1000夜終了
「今夜もおもしろかったぞ、火影君!」
あれっばれてる。
しまった。あまり術を多用したので、化けの皮が剥げてしまったのである。
「君たちの目的・趣旨はよくわかった。しかし、余も一国の王である。」
「我が王国のためになる話を聞かせてくれたら、二人を解放しよう。」
「明日までに考えておけ。余を満足させたら、願いをかなえてつかわす。」
(続く)
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第3夜(最終回)

「我が王国のためになる話を聞かせてくれたら、二人を解放しよう。」

8 最終作戦密議
これはまいった。ネタがない。アラビアンナイトはもう話つくしてしまった。
火影は途方にくれてしまった。
「シェヘラザード。どうしようか。」
スルタンと3Pではあるが、1000夜ともにした中である。気心がすっかり通じている。
「火影さま。火影さまの世界の話、まだ聞いていませんわ。」
「そうだな、読んだ本の話はすっかり、話したつもりだったが。」
「まてよ。スルタンは王国のためになる話といったぞ。」
「国のためになることか、それなら経済が一番だな。ふーむ」
 たしか、アッバース朝時代は貿易が盛んだった。
「経済といえばお金、お金といえばいくらか数えることだ。」
「よしこれだ、数字だ。ここではまだローマ数字しか、そういえば」
 ヒソヒソ・・・・・・・ヒソヒソ☆ヒソカ☆★・・最終作戦はこれで行こう。ヒソヒソ。
18禁場面はありません。

9 数字の話。
「スルタンさま、本日は火影、王国のためになるものを用意しました。」
もう変化の術どころでなくなってしまった。
「うむ、よかろう。それは何か期待しておるぞ」
。゜.☆ ドロン!
石版があらわれた。

「スルタンさま。これをごらんください。」
「I」「II」「III」~「XII」
「ただの数字ではないか。しかもローマ数字」
「たとえば1982は、こう書きます。」
火影は石版を取り出し、数字の授業をはじめた。教員免許が役に立った。

1982 = 1000 ( M )
+ 900 ( X - C = CM )
+ 80 ( L + XXX = LXXX )
+ 2 ( II )
= MCMLXXXII
(ローマ数字はむつかしいねぇ。皆さんわかりますか?)

「私の国ではこうです」
千九百八十二
(すこしわかりやすい)

「ほうかわっているのう」

「お見かけしたところ、貿易決済の数字はローマ数字をお使いのようですね」
「そうじゃ、ややこしくて困っているのじゃ」
「それではいいことをお教えしましょう」
「これをごらんください」
123456789
「これななんじゃ。さっぱりわからん。」
「123とな、「I」「II」「III」とか一二三のほうが直感的に、わかりやすいではないか。」
あぶない。早く特徴を説明しなけば、気が短いのだから。
「いえ、きわめて直感的なのです。」
「これをご覧ください」数字
「赤丸は曲がりのある角=かどの位置につけたのですが、赤丸の数が数字の大きさと一致するでしょう」
「ほう、なるほど、たしかに、おもしろいのぅ」

「もっと大きな特徴があります。画期的なことです。」
「一番右の「0」の数字をみてください。角がないでしょう。」
「たしかに角がない。まん丸の曲線だけだ。」
「角がない、なにもない。すなわちゼロといいます。」
「なにもないことをゼロというのか。理解が追いつかんのう」
あぶない、あまり早くすすむと興味が失せてしまう。
「さきほどのローマ数字では大きな数ごとにアルファベットの文字を当てています。」
「もし、おおきな金額の儲けになったらどうします。」
「どうぶり勘定?商人に儲けをかすめ取られているわけか。」
「さようでございます。さすが名君」
「これを使うと簡単、桁がうえるたびに「0」を右に足していくだけです。」
「おお、すごいではないか。便利この上ない。」
「これを王国の公用数字としてお使いください。」
「足し算掛け算も桁をあわせれば容易ですし」
「火影どの、これで、わが国の不況も解決できるの。」
「感謝だ。よくやった。余はうれしいぞ。」
「火影さま、やりましたね。ほれなおしましたわ」
まい
「むむ、褒美はやらんぞ、シャヘラザードは置いて行け、我がきさきじゃからな。」
しまった、タイミングが微妙にずれてしまった。
惜しいことをした。せっかく仲良くなったのに。

相手は絶対君主のスルタンだし、過去の人物と戦ってしまえば、任務をまっとうできない。
結果、また火影の失恋記録更新??となってしまった。残念(★>_<★)
肩を落としながら、がっくりと、もとに時代に帰還する火影であった。ぶつぶつ。

以上後世に、 アラビア数字 と呼ばれ、近代経済のいしずえとなった物語である。
真千夜一夜物語 おしまい。


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